『地球防衛隊X』という漫画を知っているだろうか…?

マンガアプリのマガポケにて連載されている漫画なのだが、
連載開始からわずか1週間で、なんと1話のコメント数はすでに1000件を超えている。
今、マガポケでもっとも熱い漫画のひとつだ。

では、一体なぜ、こんなにも注目が集まっているのだろうか?

その答えは、その内容の過激さと、トレンディさにある。

その内容は、この漫画の掲げる公式キャッチコピーが端的にあらわしている。

日本を守るため、老害を○せ。

これが、この漫画のキャッチコピーに他ならない…。

その内容の過激さから、本作はユーザーから、

令和のデスノート

老害を駆逐する進○の巨人

などと言われている。

あらすじ

それでは、一体どんな物語なのか。簡単に本作のあらすじを紹介しておこう。

警視庁にトップの成績で合格した主人公の大和孝一は、職務を忠実にこなす日々を送っていた。

しかし、そんな彼には秘めたる思いがあった。

それは…「この世の法では裁けない理不尽な悪…すなわち老害を駆逐すること─」

一方、そんな折、世間では「神隠し多発事件」が騒がれていた。
しかも、奇妙なことにその神隠しのターゲットとなっているのは、60歳以上の高齢者ばかり…。

主人公は、そんな犯人に心当たりがあった。

犯人は主人公に問う

「大和孝一さん、私が無能を喰ってあげましょうか?」ズズズ…

自分のかねての思想を実現する機会を目の前にした主人公は、その犯人の誘いに乗る…。

主人公と、神隠し事件の犯人…。そんなふたりが出会う時、老廃国家日本を建て直す計画が始まる─。

果たして、主人公は「愛国者」か、それともただの「シリアルキラー」か。

そして、この漫画は、読者に究極の問いを突きつける。

「老害は社会に必要?それとも…」

藤子・F・不二雄『定年退食』

と、ここまでで単なる漫画の紹介で終わっても良いのだが、私はこの漫画を読んでひとつ思い出したことがある。

それは、藤子・F・不二雄の描いた短編漫画『定年退食』という作品のことだ。

藤子・F・不二雄といえば、漫画『ドラえもん』の作者として有名だが、
その実、大人向けのダークな短編も数多く描いていることはあまり知られていない。

『定年退食』もそんなダークな短編の中のひとつで、その内容はずばり、

「公的権力による高齢者の強制排除」

すなわち、高齢者に対して提供される「年金、食糧、医療」などのその他一切の国家によるサービスの提供を打ち切るというものだ。

当然、病気なったとしても高齢者は治療を受けることはできない。

それは、より正確に言うなら、「死の通告」を意味する。

このような高齢者に対する公的サービスの提供を打ち切ることになったのには、理由がある。
その背景とは以下のものだ。

科学の発達した未来。地球環境の悪化により、汚染区域が拡大…それにともない食料事情が急速に悪化。
そんな状態なので、国民の食料は配給制で提供されていた。

そして、国は、この事態に対応すべく、新たな策に打って出る…。それが上記で述べた、高齢者に対する年金などの公的サービスの一切を打ち切るというもの…。

漫画の中で首相は、こう述べている。

「現在、人類がさらされております
未曾有の危機に思いをいたせば………」

「水の如く冷徹なる理性的行動!」

「今や、それだけが人類を救う唯一の道なのであります。」

藤子・F・不二雄『SF短編集<PERFECT版> 2 定年退食』(小学館)

「水の如く冷徹なる理性的行動」

このフレーズは、『地球防衛隊X』の中で、主人公が述べていた「圧倒的な暴力による選民」という言葉とどこか重なる。

おわりに

今回紹介した漫画『地球防衛隊X』は、少子高齢化問題や老害という極めてセンシティブなテーマを扱っている作品だが、
どこまでブレずに描ききってくれるのか。
この文章を書いている2024年6月現在、物語は、まだまだ序盤。今後の展開に期待したい。

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