映画『ラストマイル』、色々と伏線が散りばめられていたりなんだりでもう1回みたいと思っているのだけど、2回目をみる前に、とりあえず1回目をみた段階での分かったことなどを記憶の整理がてら書いてみる。あと感想も。
目次
回収された伏線一覧
その1:飛び降り防止
梨本「転落防止のためですか?」
エレナ「いいえ、"飛び降り防止"のためよ」
冒頭のシーンで、センター長に配属され転勤してきたばかりのエレナが、部下の梨本(なしもと)と握手をかわした後、手すり越しに下階の工場の様子を眺めながらでのやり取り。
その2:にごらなかった
刑事さんとセンター長のエレナが会って、事件の話を聞いたあとに刑事さんがボソッと言っていたセリフ。
山崎という漢字は、一見すると「やまざき」なのか「やまさき」なのか分からずに間違えやすいけど、エレナがその点で迷わなかったことを指摘している。
その3:耐熱性
親子で父親と一緒に配達員をしていた、息子のセリフ。
伏線の解説
・その1とその2
伏線その1とその2は、セレナが飛び降りた山崎佑(たすく)のことを、センター長に配属される前から既に知っていたことの伏線。
・その3
「通常よりも耐熱性が高い」ことが伏線となって、爆弾から間一髪で助かる。具体的にはドラム式洗濯機の中に爆弾を放り込むことで、爆弾がその洗濯機の中で爆発してくれたおかげで助かったのだが、そのドラム式洗濯機というのが倒産した元自社の日野元製造?(名前はうろ覚え)で作っていた製品だった。
このように「通常よりも耐熱性が高めに造られていた」というのが伏線になっている。
このシーンで「お宅の洗濯機は良い製品を使っていますね」というセリフが出てくる。
考察
「2.7」の意味
ふと思ったのだけど、「丸が二重に描かれている」→「二重の意味がある」→「ダブルミーニング」とも考えられるな。
上記の数字と矢印は、元センター長の山崎佑(たすく)が使っていたとされるロッカーに描かれていたもので、
「これは大切な証拠だから消さないように」と引き継ぎのときに代々言われそのままの形で残っているもの。
この数字の意味について、作中では一応の説明がされていて、それによると2.7m/sが「ベルトコンベアの速度」で、70kgが「最大積載量」となっている。
ちなみに単位の「m/s」は「メートル毎秒」と読み、この場合、1秒間で2.7メートル進むという意味。
以上をふまえた上で結論を書くと、この「2.7m/s → 70kg → 0」という3つの数字はセンター長になった人の精神状態を表しているのではないかと思う。
つまり、センター長は配属されたばかりの頃は「2.7m/s」という通常速度で進んで普通に仕事をこなせている。しかし、時が経つにつれ次第に、その責任の重さによるプレッシャーなどのストレスから、「自分の精神状態が限界に近づいてくる」つまり「最大積載量の70kg」に近づいていく。
そして、とうとう限界を迎え、精神状態がその「最大積載量」を越えてしまうとどうなるか?「0」になり、何も残らない「虚無」がおとづれる。つまり「死」に至ってしまうことがある、ということだと思う。
だから、自分の精神状態が限界に近づいてきたと感じたら、その最終段階である「0」つまりは「死」に至ってしまう前に、会社を「辞める」という決断をとったほうが良いんじゃないか?お前も気をつけろよ。といった警告というか、注意喚起のような意味があるのではと個人的には解釈した。
そして同時に巨大ショッピングサイトDAILY FASTに対する一種の皮肉でもあると思う。つまり、国内の物流の大半を担い、社訓であるCustomer-centric(すべてはお客様のために)を掲げながらも、
本作に何度も登場する「What you want」あなたは何が欲しい?あなたの欲しいものは何?といった問いかけを常に人々に投げかけ、商品を届けることで、人々の持つその欲望(ニーズ)に答えていく。
そんな巨大ショッピングサイトの物流の要となるのが、センター長という役職だ。
センター長は日夜、身を粉にして働き、人々の「What you want」を満たしていく。しかし、そうこうして人々の欲望を満たし続けていくうちに自分は心身ともにボロボロになっていく。次第に「0」になっていく…。
人々は欲望が満たされるのに、自分はすり減っていき次第には何も無い虚無、「0」になるという痛烈な皮肉。
「2.7m/s → 70kg → 0」を見ながら、筆者はそんなことを考えた。皆さんはどんなことを思っただろうか。
感想
キャラが魅力的
本作は、とにかく登場人物のキャラクターがそれぞれイキイキとしていて、とても良かった。同じスタッフで製作されている『アンナチュラル』と『MIU404』も筆者はまだ未視聴なので、みてみたくなった。
主人公は、サバサバ系というか、思っていることを割とはっきりと言うタイプだけど、情に厚いところがあったりして人間味のある感じが良い。
あと、家着みたいなデザインのトレーナーとパジャマみたいなズボンを着て会社内を動き回っている姿はほっこりした。
梨本くんは、
あんまり笑わないただの真面目くんと見せかけて、実は元セキュリティ会社に勤めていたホワイトハッカーというギャップが好き。あと高校時代、本当はパソコン部だったけど正直に言いたくなくて「サッカー部です」と答えたのもあるあるというか親近感あって好き。
他にも、配送ドライバーのおじいさんとその息子の二人組も味があって好きだし、
ロジスティクスがなかなかちゃんと言えない噛み噛み刑事さんもクセつよつよで好き。
コメディシーンがツボだった
本作にちょくちょく登場するギャグパートが個人的にツボだった。以下いくつか紹介してみる。
・40すぎにもなってケツを蹴られるなんてな…
配送ドライバーのコンビの息子のほうが、冒頭で親父にケツを蹴られたときに言っていた「40すぎにもなってケツを蹴られるなんてな…」というシーン、おもしろくて思わず頬がゆるんだ。
・「ロジュすつ、つ、つ、ちゅ、ュックっっ」噛み噛み刑事さん
めっちゃ噛んでてツボだった。笑った。
・八木さんの迫真のシーン
羊急便の局長の八木さん。
めっちゃ怒鳴ったあとに、「その電話の相手、社長です…」と言われて、しまったと思った時にはもう時は遅しという感じで震えだすシーン迫真の演技でとても良かった。
おわりに
個人的に今年見た中で一番当たりの映画だったと思う。こういう単に面白いだけじゃなくて、ちょっと考えさせる系の話って良いよね。