Lemino(旧dTV)というサイトで、全話無料だったので見てみました。

正直なところ、面白かったかどうかと言われると、微妙…でした。

個人的に1〜3話あたりまでは、面白いと思って見ていたのですが、全体を通してあらためて面白かったか?と問われると、うーん…という感じです。

あらすじ

まず、まだ見ていない方のために、簡単にどんな物語なのか紹介しておきます。

物語の内容を一言でいうなら、
幕末から明治初期にかけての動乱を下敷きとした架空戦記もの。

物語の舞台は、旧幕府軍vs新政府軍の戦いである戊辰戦争と、その後の文明開化の時代が中心です。

「ざんぎり頭をたたいてみれば文明開化」の音がする」という言葉にあるように、
この時代は、ちょうど、ちょんまげ頭の人々と、現代風の髪型であるざんぎり頭の人々が町を行き交う時代であったといわれます。

加えて、この時代は、現代の警察に通じる東京警視庁ができた時代でもあります。

主人公は、そんなできたばかりの警察組織の一員となり事件を追うというのが、おおまかな流れです。

ちょうど、山田風太郎原作の『警視庁草紙』という漫画が、同じ時代を扱っており当時の警察も登場するため、合わせて読んでみるのも、時代背景への理解が深まって面白いです。

微妙だった点と面白かった点

最初に、当作品は、面白かったかといわれると微妙だったと書きました。

ここからは、具体的にどういう点が微妙だったのかを書いてみたいと思います。

そして、面白かった点や魅力を感じた点もあったので、そのあたりの話も書いていきたいと思います。

微妙だった点

主人公が警察という設定を活かしきれていない

本作の公式サイトのあらすじには、こうあります。

1874年。車夫の元会津藩士・折笠静馬は、行方不明の許嫁・鹿又澄江を捜していた。だがある事件を切っ掛けに新設されたポリス(警察)の一員となり、政府転覆の陰謀を追うことに。

引用:明治撃剣-1874- | BS松竹東急

つまり、警察の一員となった主人公が国家転覆の陰謀を追うとあるのですが、
どうも実際の作中では、その物語の軸がぶれているように感じました。

1〜3話までは、事件が起きて、その真犯人を追うという流れがしっかりしていて、

特に3話に登場した殺人鬼は、キャラも立っていて魅力ある人物だったのですが。

しかし、4話になると一転して、なぜかドラゴンボールの天下一武道会を彷彿とさせる剣の腕くらべ大会が始まってしまいます。
一応、物語の中では捜査の一環ということになっていますが…なんか方向性違うくないか…?と思ってしまいました。

今書いた、剣の腕くらべ大会にしてもそうですが、この作品はとにかくいろんな要素が詰め込まれているんですね。

いろんな要素を詰め込みすぎ?

本作はいろんな要素がつめこまれていて、よく言えばバラエティ豊かということになるのですが、
その一方で、いまいち物語の方向性がはっきりしない要因になってしまっていると思います。

色々詰め込みすぎた結果、かえってどれも中途半端に終わっているといいますか…。

具体的には、本作はあらすじにも書いたとおり、山田風太郎の『警視庁草紙』風の明治時代の警察を描いた作品かと思えば、

かといって、『水戸黄門』や『剣客商売』などのような人情時代劇風な要素もあるし、チャンバラも出てくる。

それに加えて、俳優、高倉健の出演しているヤクザ映画のような要素もあったかと思えば、

英国のシャーロック・ホームズを思い起こさせるような要素もある。

今上げただけでも、

・警察
・時代劇
・ヤクザ
・英国の探偵

と、よりどりみどり。

もう少しジャンルを絞って、余計な枝葉を削ぎ落とそば、もっと面白い作品になったのではと個人的には思うところです。

改善策:思い切って話の筋をもっとシンプルにしてみてはどうか

批判ばかり書いてもあれなので、では、具体的にどのように改善すればもっと面白くなったのだろうか?と個人的に考えたことを書いてみます。

以下のように話の筋を変更してみてはどうかと思いました。

まず、3話に登場した狩人倶楽部の殺人鬼を、敵役の中心人物に据える。
そして、主人公たちはその殺人鬼を追うが、
追っていくうち、殺人鬼の本当の狙いに気づく。
殺人鬼の本当の目的は、クーデターの混乱に乗じて、エルドラドと呼ばれる「黄金」を手に入れることだった。
主人公たちは、クーデターを阻止すべく奮闘するとともに、殺人鬼よりも先に「黄金」の隠し場所を見つけるための調査に乗り出す。みたいな話はどうでしょうか。

このようにすれば、主人公が警察という設定もより活かされると思うし、
主人公vs殺人鬼という対立構造もシンプルになって物語の筋もわかりやすくなる。
そして、殺人鬼ですから視聴者のキャラに対するヘイトも充分すぎるほどある。敵キャラに対する視聴者のヘイトが大きければ大きいほど、倒されたときの快感は大きくなると思うのです。

それに加えて、作中の、戊辰戦争の対立が尾を引いている明治のはじめ頃という時代設定も、「黄金」の隠し場所という部分で活かされると思うのです。

そして、この際
・時代劇
・ヤクザ
・英国の探偵

などの要素は、ばっさりと切ってしまう。

このようにすることで、ジャンルもはっきりするし、物語もよりわかりやすくなるのではと思いました。

まあ、半分くらいは私の好みが入っている感はありますが…。

面白かった点

ここからは、面白かった点や魅力を感じた点を書いていきます。

演出にこだわりを感じる

ところどころに登場するキャラクターに関する演出が、短いシーンでそのキャラクターを印象づけていて、魅力を感じることが多々あったのでいくつか紹介します。

全部で3つあります。

まず1つ目は、3話に登場した狩人倶楽部の首領、善兵衛の演出です。

それはこのようなシーンでした。

高級料亭で、議員の木戸孝允と密談をしているシーンでのこと。

善兵衛がお吸い物を飲んだあと、「しおけが足りん」とつぶやいて、
自分の指をナイフで少し切って、お吸い物の中に血を垂らすというシーンがありました。

このシーンは、善兵衛の狂気や、文字どおりの「血を好む」本人の性質を表しているようで、その気色の悪さからもなかなかの強烈なインパクトが残っているシーンです。

2つ目は、4話に登場した画家で、撃剱会(げっけんかい)にも出場した人物の演出です。

それはこのようなシーンはでした。

邸宅の庭で、絵を描いていた画家は、使おうとした、赤の絵の具が切れてしまったことにふと気がつく。

しかし、使いの者に買いに行かせている時間はない。次の予定が控えているからだ。

「予定は…未来の自分への約束」

そうつぶやいた画家は、ちょうど上空を飛んでいた鳥に向かって石を投げて、鳥を射止める。

そして、その鳥を殺した血を赤の絵の具の代わりとして、絵に色を塗るというシーンです。

予定を守るためなら、手段を選ばないという、ある種のサイコパス的な狂気が演出されており、
ゾクッするとともに、ワクワクする演出だと思いました。

最後の3つ目は、キャラクターに関する演出とは少し違いますが、

このようなシーンでした。

部屋の中で、狂死郎達が作戦会議をしている。

狂死郎の仲間のひとりの愚円(ぐえん)が、ふと人の気配を感じて、部屋の隅へ向かってクナイをシュッと投げる。

しかし、そこにいたのはトカゲ。

「なーんだ、トカゲかー」

と仲間の一人が安堵の声をあげるが、

その直後、トカゲのいた位置から少し離れた場所に目立たないように開いていた壁の穴が映される。
そして、その穴から部屋の中をのぞいていた人物の顔がアップで映されるというシーンです。

しかも、このシーンは、トカゲのしっぽが切れていることも重要だと思います。

トカゲは、身の危険を感じると、自分のしっぽを切り離して、敵がそのしっぽに気を取られているすきに逃げるという習性があります。そして、その切り離されたしっぽは、切り離されたあとも10分程は動き続けるそうです。

つまり、トカゲに気を取られて、本来発見するべき、穴からのぞいている人物を見逃すというのは、まるで、このトカゲのしっぽ切りようだと思いました。

演出にこだわりを感じる部分です。

作中の時代の歴史に興味が持てた

幕末から明治維新ごろの時代は、短い期間の間の多くの出来事が立て続けに起こっていて、複雑でわかりくいというイメージが個人的にありました。

しかし、本作は、そのような複雑怪奇で動乱に満ちた時代を、大きく分けて、会津と庄内vs明治政府という対立を軸として描くことで、
流れがシンプルになってわかりやすくなっていると感じました。

ほかにも、会津藩主の松平容保(かたもり)や、剣士の中沢琴、大久保利通などの実際の歴史上の人物も登場し、

この時代にたいする興味が湧いてきました。

小ネタ

空から鯛(タイ)の木彫りが降る

これは、空からお札がふってきたことがきっかけでおこったとされる民衆運動「ええじゃないか」のオマージュですねw

おわりに

素材は良いだけに、もう少しなんとかすればもっと面白くなったのではないかと思わせる惜しい作品だと思いました。

この『明治撃剣-1874-』は、プロデュース:Crunchyroll、アニメーション制作:つむぎ秋田アニメLabのオリジナルアニメ。

つむぎ秋田アニメLabというのは、はじめて見る名前だったので興味を覚えて調べてみたところ、

2017年に設立したばかりの比較的新しいアニメ制作会社だそう。

以下のインタビュー記事も読みましたが、

インタビューのなかで、「業績が上がって、みんなにまともな給料が払える会社を目指している」ということを言っていて、アニメ業界の労働環境はブラックなイメージがある中、インタビューを読む限りではわりと好印象な感じでした。

今後の動向に注目していきたいと思いました。

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