欠点の一つもない人間は、ただほかのすべての人々に自分の不完全さを意識させるだけだ。テニスンという原始時代の詩人はこう書いている。”欠点の一つもない男は、欠点だらけだ”
引用:アイザック・アシモフ『はだかの太陽』(ハヤカワ文庫)p315
欠点の一つもない男は、欠点だらけだ
『はだかの太陽』という小説を読んで、印象に残った言葉です。
人間の顔は左右非対称である。したがって、顔の左半分の写真、右半分の写真をそれぞれ合成してみると、違った2つの顔が出来上がる。という話を聞いたことがあります。
左右対称であまりにも整いすぎた完璧な美貌というのは、どこか非人間的で不気味に感じてしまうのではないでしょうか。
『はだかの太陽』とは
アイザック・アシモフによるSFミステリ小説です。
『はだかの太陽』は前作『鋼鉄都市』の続編にあたり、一時期、不可能とまで言われたSFとミステリーの融合を見事に成し遂げた作品です。
面白いと思った点
読んでみて面白いと思った点は以下です。
・惑星間の異文化が面白い
・魅力的な女性が登場する
・最後まで犯人がわからずにグイグイ読ませる展開がすごい
順番に見ていきます。
惑星間の異文化が面白い
本作では地球に住んでいる主人公のイライジャ・ベイリが、ソラリアという惑星で起きた殺人事件の調査を依頼されます。
そしてソラリアで、捜査を進めることになるのですが…。
その際に文化の違いによって、捜査に右往左往させられ、とても苦労する描写が出てきます。
具体的には、ソラリアという惑星では、お互いを直に"見合う"ということが特別な意味を持ちます。
我々地球人からすれば、人に合うときに、お互いを直接見るというのは、普通のことでわざわざ話題にするまでもない程ですが、文明の発達したソラリアでは、そうではないのです。
これが、捜査の障壁となり主人公はとても苦労します。
惑星間でこのような文化の違いが生じるというのは、今までに考えたことがなく、新鮮でした。
考えてみれば、地球内でさえも、国によって文化が違うのですから、惑星間でも文化が違うというのは、当然ありえる話ですね…。
こういった壮大な妄想をかきたててくれるのも、SFの醍醐味の一つなのかな、なんて思ったりもしました。
主人公が、こうした異文化に触れることで、少しづつ考えが変化していくのも面白いですね。
魅力的な女性が登場する
アシモフ氏の描く、キャラクターは好きですが、女性キャラクターも魅力的に描きますね。
本作には登場する女性キャラクターは、二人います。
そのうちの一人が、グレディア・デルマーです。
以下、主人公ベイリがグレディアにはじめて合ったときの描写の一部です。
なにもかもが、とても好ましく思えた。
ベイリはどぎまぎして言った。
引用:アイザック・アシモフ『はだかの太陽』(ハヤカワ文庫)p82
主人公が彼女が美しい魅力的な女性であったことに驚き、やりづらさを感じている(照れている?)ことがわかります。
そして、次は主人公ベイリの相棒が、グレディアの外見について述べたものです。
夫人はあらゆる方面の肉体的魅力の基準をみたしています。さらに、あなたの行動からみて、あなたがそれに気づかれ、そして彼女の外見を肯定されたことは明らかです。
引用:アイザック・アシモフ『はだかの太陽』(ハヤカワ文庫)p106
もう一人の女性は、クロリッサといいます。
クロリッサは、がさつな感じで、決して美人な方ではないけど、魅力的な声の持ち主です。
グレディアよりも気さくな感じですね。
登場シーンは、わき腹をぽりぽりかいて登場します。
ちなみに筆者は、グレディア派です。
主人公も完全にグレディアに惚れちゃってるな…といった描写があって面白かったです。
主人公とグレディアがいい感じの雰囲気になるシーンもあり、現代の美少女が登場するラノベっぽい雰囲気を感じました。
手元にある『はだかの太陽』が出版されたのが、1984年で今から30年以上も前なのにも関わらず、内容はぜんぜん古い感じがしないですね。
最後まで犯人がわからずにグイグイ読ませる展開がすごい
前作の『鋼鉄都市』もそうだったのですが、ほんとに最後までグイグイ読ませますね。
途中で、犯人がわかっちゃったよ。もういっか。とはならない。
その理由の一つは、著者の博識に裏打ちされたキャラクター同士の議論にもあると思います。
最後まで飽きさせない、著者の力量には脱帽です。
さいごに
出版されたのが今から30年以上も前なのに、2022年の今読んでも全然古い感じがしないのは、本当にすごいと思います。
まさに傑作の名にふさわしい不朽の名作(褒めすぎ?)だと思います。