アイザック・アシモフ『鋼鉄都市』(ハヤカワ文庫)を読み終えました。

 

ロボットと刑事のコンビが難事件に挑むという、SFとミステリーの融合が見事な作品です。

 

筆者はミステリー小説は好きですが、SFミステリを読むのははじめてだったので新鮮でした。

 

本作品では「ロボット工学」の話がよく登場します。

 

なかでも印象に残っているのが、なぜロボットが人間に似ていなければならないのか。という話です。

 

以下、引用します。

「しかし、なぜそのロボットが人間の格好をしてなければならないのです?」

 

「それは、人間の形態が、あらゆる意味において、最も理想的、実用的なかたちだからです。われわれは、特殊な分化成長をした動物ではありませんね、ミスタ・ベイリ。神経組織と、その他いくつかの些細な点を除けば。そこで、もし非常に多くの、さまざまな変った仕事も、すべて上手にやりこなすような設計をと望むならば、それは、人間の形態を措(お)いて他にないのです。しかもそれだけでなく、現在われわれの全技術は、すべて人間の形態に基づいてつくられています。たとえば自動車ひとつを例にとっても、その操縦装置は、人間の身体に付属した、適当な長さの四肢に___適当なタイプの関節によって組み合わされた、適当なサイズとかたちの脚と、手とによって、最も操作しやすいように設計されてあるでしょう。椅子とか、テーブルとか、あるいはナイフやフォークのようなごく簡単なものも、人間の尺寸の要求と、その機能のかたちとに適応するように作られている。ロボットに人間の形態をとらせることは、現代社会のあらゆる機具機械類を根本的に設計しなおすよりも、はるかに容易なことなのですよ」

アイザック・アシモフ『鋼鉄都市』(ハヤカワ文庫)p228~229

 

まとめると、現在のわれわれの全技術は、すべて人間の操作しやすいように作られている。自動車もそうだし、椅子やテーブル、ナイフやフォークも同じで、人間が使うことに最適化されている。こういった点から、ロボットに人間の形をさせることが都合が良いからです。

 

こういった、なぜロボットが人間の格好をしていなければならないのかといった議論は、初期のロボット工学に関する文献の中で、さかんに議論されていたと本書にありました。

 

本書には、今見てきたように本格的なロボットの話がよく登場するため、まったくその分野に詳しくない筆者でも、ロボットに興味がわいてくる本でした。

 

もちろんストーリーの面白さは折り紙つきです。ただ世界観を理解するのに少し時間がかかるタイプの本で、途中から一気に面白くなり、ついつい読みふけってしまいました。

 

なんと本書には続編があり、続編の『はだかの太陽』でも、本書と同じロボットと刑事の名コンビがまた登場するということで、楽しみです。

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